#26 体幹部を固めると弱くなる!?

 

体幹部の動き・・・・ 
 前回は、上半身と下半身の境目は胸腰椎移行部というお話をしました。

 ここでもう一度、利重力身体操作法のポイントを確認してみましょう。
・負荷(重力)を受ける
・骨で支える  
・筋肉の収縮力に頼らない 
・体幹部の筋肉の張力で出力 
 これら4項目を踏まえて人の動きを
1・「筋肉」の動きではなく、「骨」の動きを見る
2・筋肉の「収縮力」ではなく「張力」で考える 
 という視点で考える。
 
 当てはめて考えてみましょう。
 体幹部を筋力ではなく骨で支えることによって体幹部の軸が作られます(姿勢編参照)。
 軸が作られることで体幹部の筋群の張力が引き出され、力が発揮される。ということになります。
 体幹部の軸や動きの理解には、「ヤジロベー(#25参照)」の他に、もう一つポイントがあります。
 それは、「歯車」です。

 


 どういうことでしょう?
 歯車とは、お互いの歯がかみ合っているので、どちらか一方を回せば、もう一方も回ります。お互い独立して動くことはありません。
 体幹部も同じで、胸腰椎移行部を境に、胸部が一つの歯車であり、骨盤を中心にした腰部がもう一つの歯車と考えることができます。
 上の歯車を右に回せば下の歯車は左に回り、下の歯車を右に回せば上の歯車は左に回ります。胸部と腰部も同じ関係なのです。胸腰椎移行部を境に歯車のように動きます。

 

 

横から見た歯車との比較

 

前から見た歯車との比較


実際の動きで見てみましょう。


      

体幹部は歯車のように動きます。


 このように、胸腰椎移行部を境に胸部の歯車と腰部の歯車が連動して回転するのがお分かりいただけると思います。
 実際は、前から見た「側屈方向の回転」と横から見た「前屈後屈の回転」、上から見た「横の捻じれの回転」が協合した動きになります。
 「腰を入れる」「腰を捻る」「腰を反る」という表現があります。
 そのまま骨盤のすぐ上のいわゆる「腰」で動かしてしまうと動かない腰椎を無理矢理動かそうとすることになるので、腰を痛める原因となります。
 つまり「腰」とは、もう少し上の部分「胸腰椎移行部」ということなのです。
 以上が体幹部の動きになります。
 では、体幹部が強いとはどういうことでしょうか?また強くするには?
 体幹部の強さを左右するのが「軸」です。「体軸」とも呼ばれます。
 本来は、自身にかかる負荷、つまり重力によって、体幹部の歯車の動きを引き出すことで軸が作られます。

例えば、
重りをもって片足ジャンプをした場合。        
 前から見ると・・・ 

 

 

この場合、左半身のバネでジャンプしてます。


この場合、左半身のバネでジャンプしてます。   
 この場合、着地の衝撃とダンベルの重さによって胸部と腰部の歯車が回転し軸が作られます。体幹部の張力が引き出され体幹部のバネによって歯車が反対方向に回転しジャンプします。
 横から見ると・・・・

 


 着地の衝撃、ダンベルの重さ、つまり重力を利用して体幹の歯車が自然に動かされる、あるいは歯車の動きを誘導することで結果的に体幹部の軸が作られます。
 このジャンプの動きの場合、負荷を受けることで地面に対して垂直方向に自然に後付けで軸が作られ、体幹部の張力によって同じ軸の方向に出力されます。
 この跳び方だと、脚の力でジャンプするのではなく体幹部のバネの力で跳ぶことができます。体幹部のより大きな筋肉群を使うため、脚の筋肉を使うよりも大きな力が発揮でき、高く跳ぶことができます。また張力を利用しているのでストレッチをしながらジャンプしているため筋肉の柔軟性を保ったまま動き続けることができるます。筋肉が張りにくく血流も滞ることがありません。よって疲れにくくなります。

 さらに後付けで軸ができるということは、負荷を受ける方向と出力する方向の同一直線上に軸が作られるためバランス的にも安定します。姿勢やバランスを保つための無駄な筋力を使う必要がありません。

 まとめますと
 重力を利用して体幹部の歯車の動きを引き出せれば、大きい力を発揮しているのに疲れない、筋肉も硬く張らない、軸が自然にできてバランスも安定するといった効果が得られます。
 つまり、競技のパフォーマンスが上がる、ということになります。
 この動作を可能にするには、筋力に頼らない必要があるのです。着地の瞬間、力を抜いて身体にかかる負荷を受け入れ胸腰椎移行部で支える(骨で支える)ことが重要になります。

 もし、体幹部を力で固定したらどうでしょう。

 体幹部の歯車の動きがなくなり、全体が一つの物体になります。
 体幹部の動きがなくなるので、昔のロボットのような動きになります。

 


 こうなると体幹部のバネが使えなくなります。体幹部の出力が見込めなくなるため、ジャンプするには脚の筋力だけで跳ぶしか方法がなくなります。
 体幹部の重さ自体も単なる負荷として脚に掛かります。重いものを小さい筋力で跳ぼうとするため、当然高く跳ぶことができません。
 また体幹部を固定するため、持続的に筋肉に力を入れた状態になっています。ジャンプも膝を中心に曲げ伸ばしで跳ぶことになります。筋肉の収縮力を主体として使うため疲労が蓄積します。    
 大腿四頭筋で立ち上がりのところでお話したように膝関節への負担も多くなります。
 体幹部の歯車様の動きであれば、着地の衝撃によって軸が後付けで作られるため、着地の衝撃の方向と同一直線状に軸が自然に作られました。
 しかし、体幹部を固めると始めから軸が作られてしまいます。
 仮に絵のように軸が斜めになって着地すると

軸が斜めになって着地する。


軸が斜めになって着地する。
 着地の方向と軸の向きがズレます。
 軸と力の方向が一致していないのでバランスが悪くなり、バランスの悪さを修正するため無駄な筋力を使って修正しようとしたり、ジャンプする方向を調整したりします。
 脚の筋力を100%ジャンプのために使えません。

 まとめます。
 体幹部を筋力によって固定すると脚の筋力だけで跳ぶため高く跳べません。
 体幹部を筋力で固定すると筋力を持続的に発揮している状態であり、いわゆる「力み」を生じてしまっています。
 更に脚の筋力だけで跳ぶ、また、崩れたバランスを修正しようと余計な筋力を使うため疲労しやすくなります。
 軸がズレやすくバランスが悪くなり不安定となるため競技パフォーマンスが低下する。
 ということになります。

 いかがでしょうか。体幹部を固めると競技パフォーマンスが上がるどころか、下がってしまうという現象が、往々にして起こりうるのです。

 体幹部が強いとは、体幹部を固める筋力が強いのではなく、身体にかかる負荷を力を抜くことで受け入れ、胸腰椎移行部を中心とした体幹部の歯車の動きを引き出し、後付けで軸を作る能力が高いことを「体幹部が強い」というのです。

 よって、体幹部を強くするには、体幹部のアウター、インナーマッスルを鍛えるのではなく、力を抜くことと体幹部の操作性を高め胸腰椎移行部で支える感覚を得ることが重要であり、操作性を高めるには柔軟性が欠かせないということになります。

 競技動作に使える筋肉を発達させるとは、正しい身体の使い方でトレーニング、運動を行った結果として後付けで付いてくるもので、順序を間違えて先に筋肉を鍛えることを優先してしまうと動きの精度が下がり、パフォーマンスが低下するだけでなくケガにつながる可能性を助長してしまいます。

 一般に行われている体幹トレーニングは、体幹部を固めることに主眼をおいています。
 体幹部の軸を作る導入段階としては有効です。やはり、最初は力を抜いて胸腰椎移行部で支えて軸を作ることは難しい面があります。慣れてない人は腰を痛めたりする可能性もあります。
 そこで、まず腹筋や背筋の筋力で体幹部を真っ直ぐにする感覚をつかんで、そこから肩甲骨や骨盤の位置関係によって胸腰椎移行部で支えるという方向に移行していく、という流れであれば、非常に効果的であると考えます。
 ところが、一般的な体幹トレーニングは、体幹部を固める段階で止まっていて、その先の展開が見られないケースが多いように思われます。

 正しい体幹部の動かし方を理解し、必要なケースを見極められれば、固める体幹トレーニングも大変有効なトレーニング方法になります。

   以上が、体幹部の動きの基本的な考え方です。


 ここまでは、上肢、下肢、体幹部と個別に見てきました。
しかし、人間の身体は連動して動くものです。
 さあ、次回からは、連動性について見ていきましょう。

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