動作と呼吸
トレーニング中や、競技動作の説明をしている際、「呼吸はどのように意識したらいいですか?」と、よく聞かれます。
まず、基本的に、「胸郭が開く動きの時に吸う、胸郭が閉じる動きの時に吐く」と答えています。
ただし、あくまで取っ掛かりのイメージが付きやすいように、そのように答えるのですが、本来は呼吸は意識せず、勝手になされるのが理想です。
呼吸を自ら意識的にしようとするのではなく、基本的には運動の動作によって勝手に自動的に行われるものと考えています。
「動作によって自動的に」とは、どういうことでしょう?
まず、動作の原則を振り返ってみましょう。
人間の効率的な動作の原則は、
「自身の身体にかかる重力(重心移動や荷重によって生じる負荷の総称)を胸腰椎移行部に受け入れることで肩甲骨、骨盤、胸腰椎移行部を連動させ、体幹部の筋群の張力を引き出すことで生じた力を股関節、肩関節の螺旋の動きによって力を末端部に伝える。」
というものでした(利重力身体操作法 動的動作編)。
簡単に言うと、胸腰椎移行部を中心に体幹部が反る、丸まるという動きを繰り返すのが動作の基本になります。
走る、跳ぶ、投げる、打つ等々、人が出力する際、体幹部を写真のように使うことで効率的で大きな力を生み出すことができます。
トップアスリートや武術の達人がハイパフォーマンスを発揮できるのはこのためです。
写真を見て頂ければお判りのように、反る時は胸郭が広がります。対して丸まる時は胸郭がしぼみます。
ということは、胸郭が広がった時に息が吸い込まれ、胸郭がしぼんだ時には息が吐かれるということになります。
前回、お話したように、肺そのものが動いて呼吸が行われるのではなく、肺の「入れ物」である胸郭が広がったりしぼんだりすることで肺に空気が出たり入ったりするということです。
ここで勘違いしやすいのは、胸郭が広がった時に「吸って」胸郭がしぼんだ時に「吐く」と呼吸を「能動的」に行おうとしがちです。
そうではなく、開くから勝手に吸われる、しぼむから勝手に吐かれる、という認識です。
つまり、体幹部、胸郭の動きによって呼吸は行われるもので、初めに呼吸を考えるよりも、まず正しい姿勢、動作をすることにより自動的に呼吸が行われると考えた方が自然なのです。
大きく激しく体幹部を動かせば、それだけ胸郭の広がり、しぼみが大きく速くなります。結果呼吸も大きく、速くなります。
意識的に呼吸量を調節するのではなく、その動きによって必要な呼吸量、速さが決定され自動的に行われるのです。
そうすれば、呼吸を意識的に行うことによる呼吸筋の疲労も最低限に抑えられ、また競技動作のみに集中することができ、動作の精度が上がります。
正しい姿勢、動作が行えれば、意識せずとも適正に呼吸が行われ、同じように適正に腹圧がかかり血流が促進され、体幹部が安定しハイパフォーマンスを発揮することが可能になります
基本的には、このように動作によって呼吸が行われると考えた方が自然です。
この基本を押さえた上で、応用として胸郭が開いてから閉じる際に意識的に息を吐くことで、呼吸筋の収縮を促し、体幹部の出力を上乗せするというテクニックもありです。
陸上の投擲競技などで大声を出す選手がいます。これは、脳のリミッターを外すという目的の他に声を出す際の呼吸筋の収縮により、出力を上乗せしているテクニックの一つです。
このように、高いパフォーマンスを発揮するためには体幹部のバネの力を利用して動作を行う必要があり、結果として胸郭という「袋」が自然に膨らんだり、しぼんだりすることで呼吸が行われるのです。
要するに、正しい身体の使い方、動作ができれば、意識せずとも適正に呼吸が自然に行われるということなのです。
さて、ここでまたしても問題です。
腹圧でも、触れましたが、
正しい動作ができれば正しい呼吸が自然に行われます。ということですが
、
では、逆はどうか?
正しい呼吸を意識すれば、正しい動作ができるようになるのか?
次回、「○○の呼吸!△の型!!」・・・・
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