腹圧について
「腹圧」とは?
腹圧が大事! 体幹部が安定することでパフォーマンスの向上が見込まれる。姿勢の改善、腰痛改善、ウエストが引き締まる、代謝が上がる。
などなど、 身体に良いことを多く聞きます。
腹圧とは「腹腔内圧」と言います。
人間の胴体は、横隔膜を境に上の部位、肺や心臓があるところを「胸腔」と言い、いわゆるお腹、消化器官、泌尿器、生殖器があるところを「腹腔」と言います。
つまり、この黄色の〇の部分に圧力をかけることを「腹圧をかける」ということになります。
よって、腹腔を取り巻いている組織、腹筋群、横隔膜、骨盤底筋群の筋力を用いて腹腔内に圧力をかけましょう。
と、ここまではよく聞くお話なのですが、そもそも、腹圧がかかるメカニズムは、どうなっているのでしょうか?
実は、このメカニズムを理解しないで、腹圧を上げるトレーニングを重ねると目的とかけ離れた結果になる可能性があるのです。
まず、腹圧のメカニズムを知るためのポイントを3つ挙げると
1「横隔膜の下制」 2「腹筋群の張力」 3「骨盤の構造」となります。
一つずつ見ていきましょう。
1、 横隔膜の下制
まず、腹圧と言えば「横隔膜」です。横隔膜の収縮により腹圧をかけるといったイメージが強いでしょう。
ここでは、あえて横隔膜の収縮ではなく「下制」という言葉を使います。「下制」とは下に下がるという意味です。
腹腔内に適切に圧力をかけるには、横隔膜が下制する必要があります。横隔膜は呼吸筋です。息を吸う際に収縮し、弛緩することで息を吐きます。
実は、横隔膜が収縮すれば必ず下制するわけではありません。逆に上に上がってしまい背中を丸く、肩を上に押し上げてしまうこともあります。
これが、いわゆる腹式呼吸と胸式呼吸の違いになります。
ここでは端的に、横隔膜が下制する呼吸を腹式呼吸。横隔膜が下制せず、肩が上がってしまう呼吸を胸式呼吸と言います(違う解釈をされている方もおられます)。
腹式呼吸か胸式呼吸、どちらかを左右する要因が「姿勢」になります。
<正しい姿勢のメカニズム・・・・「姿勢編」より>
横隔膜だけでなく、他にも呼吸の際に補助的に働く筋肉があります。
その中の一つに「肋間筋」という筋肉があります。名前の通り肋骨と肋骨の隙間を埋めるように付いている筋肉です。
息を吸ったり、吐いたりする際、収縮して胸郭を広げたりすぼめたりします。
実は、解剖学上では肋間筋の種類ごとに肋骨を挙上する肋間筋と下制する肋間筋と分けられているのですが、この分類が微妙です。
肋骨と肋骨の間を結んでいる以上、収縮すれば肋骨間を狭くすることには違いがないからです。収縮によって肋骨が挙がるか下がるかは、それだけでは判断できません。
特に息を吸う際に肋間筋が肋骨を挙げるか下げるかは、胸郭の状態によって決定します。胸郭が広がっていて肋間筋に常時、張力が掛かった状態であれば、肋間筋の収縮により肋骨は挙上されます。
胸郭がすぼまっていると肋間筋の収縮により肋骨を下制させることになります。
その胸郭の状態を決定するのが「姿勢」なのです。
以上のように、胸郭が開かれ、肋間筋が肋骨を挙上、横隔膜が下制する腹式呼吸を自然に行うためには横隔膜の問題だけでなく「正しい姿勢」が重要な要因となります。
横隔膜も胸郭が開いた状態(広がった状態)で収縮することで張力がかかり、下制することが出来ます。
では、腹圧をかけるために横隔膜の下制が必要な理由は何でしょうか?
腹腔に圧力がかかるなら、周囲の腹筋群の筋力で圧をかけても問題ないでしょうし、横隔膜が挙がろうが下がろうがどちらでも良いのではないでしょうか・・・?
<※正しい姿勢の詳細については、利重力身体操作法、姿勢編をご参照ください。>
2,腹筋群の「張力」
腹圧を語る上で必ず出てくるもの、その2「腹筋」です。
特に「腹横筋の収縮によって・・・」という表現を多く見かけます。
腹腔の構造が、上が横隔膜、下が骨盤、前面側面を囲んでいるのが腹筋群ですので、腹圧を掛けようとするなら横隔膜と腹筋群、特に横に走行している腹横筋の収縮力によって圧をかけるといった考え方が単純明快というわけです。
腹筋群は大きく4種類に分けられます。
・腹直筋 ・外腹斜筋 ・内腹斜筋 ・腹横筋 の4つです。
ウエストを気にされてトレーニングに取り組んだ方なら一度は耳にした筋肉達でしょう。
直筋、斜筋、横筋とそれぞれの名前から解るように、走行が異なります。
ざっと説明しますと、最も表面にあるのが腹直筋で肋骨から真下に伸びて骨盤の恥骨部に止まります。
腹直筋の深層に位置するのが外腹斜筋、内腹斜筋です。
外腹斜筋は肋骨からお腹の中心に向かって上から下に斜めに走行します。
内腹斜筋は骨盤からお腹の中心に向かって下から上に向かって走行します。
更に深層にあるのが腹横筋で、腰の方から真横に走行します。
4つの腹筋群は、腹筋群や腰背部の筋肉を包む筋膜を介して中央部で連結します。
この筋膜を「胸腰筋膜(きょうようきんまく)」と言います。
この胸腰筋膜によって腹筋群、腰背部の筋肉は互いに影響しながら働きます。
さて、ここで「動作の原則」を思い出してみましょう。
筋肉の収縮力ではなく「張力」で考える。です。
腹圧に関しても同じことが言えるのです。
「いやいや、腹筋に力を入れて収縮させないとお腹に圧力はかからないでしょう!」
と思われるかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか?
張力を考えるには、筋肉を伸ばす方向に考えることです。
腹筋群がストレッチされるにはどういう状態になればいいのでしょうか?
3, 骨盤の構造
腹腔を構成する重要メンバーの3つ目、底を支える「骨盤」です。内臓を乗せる皿のような役割をします。
ここで気になるのが、骨盤の形です。なぜこのような形をしているのでしょうか?
内臓諸器官をしっかり支えるのであれば、皿のような形や、より安定するバケツのような形の方が良いのではないのでしょうか?
バケツの前がかけた形
なぜこんな形になったのでしょう・・・・・?
次回は、腹圧のメカニズムについて・・・・
3つのポイントの問いに答えていきます。
出張「身体の使い方教室」などやります!
お問い合わせはこちらから、お電話、メールにてお気軽にどうぞ!
コラム一覧 記事一覧表示
- #38 身体能力の限界。あなたはポジティブ派? ネガティブ派?身体能力の限界についてネガティブに考えると、 ゴールが遥か彼方過ぎて気が遠くなる話・・・・・・ 「人間は、トレーニング
- #37 「○○の呼吸!△の型!!」からの「守破離」今まで見てきた動作と呼吸の関係は、まず先に「正しい動作」でした。 正しい動作ができれば自然に呼吸が必要な分だけ行える
- #36 動作と呼吸動作と呼吸 トレーニング中や、競技動作の説明をしている際、「呼吸はどのように意識したらいいですか?」と、よく聞かれます。 まず、基本的に、「
- #35 腹圧の話 その3 大静脈還流重力に逆らって下肢から上がってきた血液は大静脈に集められます。この大静脈中の血液はどのようにして心臓に帰ることができるのでしょう
- #34 腹圧のメカニズム☆腹圧のメカニズム 整理しましょう。腹圧を適正にかけるには・・・・・・ なぜ、横隔膜は下制しなければならないのか?